「シマクサラシ」は沖縄の悪疫祓い☆血と骨肉で祓う儀式

「シマクサラシ」は沖縄の悪疫祓い☆血と骨肉で祓う儀式

「シマクサラシ」は沖縄の悪疫・悪霊祓いの行事ですが、那覇市都心部などの若い世代では、知らない方も多いですよね。

シマクサラシは沖縄本島北部ではあまり見かけませんが、南部地域など…、特に旧暦行事が残る地域(集落)では、今でも集落行事が残っています。

このシマクサラシが驚かれるのは、動物の血や肉を用いた儀式のためです。今にも残る沖縄の悪疫払い「シマクサラシ」、興味深いですよね…。

そこで今日は、沖縄では旧暦二月上旬に行われる、悪疫払い行事「シマクサラシ」の儀式をお伝えします。

「シマクサラシ」は沖縄の悪疫祓い☆
血と骨肉で祓う儀式

シマクサラシは悪疫祓い行事

シマクサラシは昔から旧暦二月の前半に行う集落が多いです。

【 シマクサラシを行う時期 】

☆ 旧暦二月前半時期(旧暦二月一日~十五日)は、新暦2019年で言うと3月7日(木)~21日(木)にあたります。

・ ただし旧暦二月十五日(新暦2019年3月21・木)に当たる日は、ヒヌカンの拝みの他にも、二月ウマチーや春分の日に当たるため、初旬に行う集落が多いのではないでしょうか。

現代では旧暦行事が残る集落でも、麦稲の収穫祭(豊作祈願)であるウマチーは、五月ウマチーに行う集落が多いので、二月ウマチーは関係ないかもしれません。

ただ、春のお彼岸はお墓参りや家庭内での拝みを行う門中も多いため、そこまで配慮して旧暦二月に入るとすぐ行う集落を多く見掛けます。

集落行事としてのシマクサラシ

集落内にヤナカジ・シタナカジ(悪疫や悪霊)を寄せ付けず、跳ね返すためのシマクサラシの儀礼は、主に動物の血や肉を用います。また、集落の境界線に結界を張ることも独特の儀礼ではないでしょうか。

【 集落行事としてのシマクサラシ 】

① ヒジャイナー(左縄) … 集落内の結界には「ヒジャイナー」と呼ばれる左ないで作る縄(左縄)を用います。

・ 集落の境界線となる道に、ヒジャイナー(左縄)を張ることで出来るのが、結界です。

② 動物(主に牛)の骨付き肉 … また、ヒジャイナー(左縄)の結界には、ところどころに骨付きの動物肉を括り付けます。

③ 集落のウガンジュ(拝所)での拝み … 集落内の門中、ムートゥーヤー(宗家)の家長が、家のビンシーを持ち寄り、拝みを捧げます。

・ ウサギムン(お供え物)に、ジューバク(重箱)に詰めた生肉を供えるのも特徴的です。

ちなみに、拝みで捧げたウサギムン(お供え物)の生肉は、拝み後に皆で調理をして肉汁を作り、集まった人々へ振舞います。

ヒジャイナー(左縄)は魔除け

シマクサラシの儀礼が最も有名ですが、もともと沖縄ではヒジャイナー(左縄)自体に魔除けの意味合いが込められてきました。

一般的な縄の編み方は藁を右ないでなっていきますが、ヒジャイナー(左縄)では、縄ないの時に左手が上になるようなない方です。

【 今も残るヒジャイナーの魔除け 】

☆ ヒジャイナーにはあの世とこの世、魔界と人間界の境界線を作ると信じられてきました。

・ 神聖な御嶽や殿、地鎮祭でもヒジャイナー(左縄)の結界が張られる他、その昔は赤ちゃんが産まれる時に、小屋まわりをヒジャイナー(左縄)で囲いました。

シマクサラシの集落行事が残る地域では、行事前に何週間かに渡り公民館などの一か所に集まり、皆でヒジャイナー(左縄)をセリセリと作る姿も多く見受けます。

家庭でのシマクサラシ

集落行事は見受けられるものの、家庭でのシマクサラシはすっかり見なくなりました。けれども、少し前までは家庭の軒先でも魔除けの小枝がありました。

【 家庭で行うシマクサラシ 】

☆ 家庭では小枝の先に動物の血(牛でも豚でも可)を付けて、家の四隅(東西南北の角)に差します。

・ 初めて聞くと驚く方も多いのですが、その昔の沖縄には「血が出る」ことが魔除けの条件として必須だと信じられてきました。

沖縄ではヤナカジ・シタナカジ(悪風・悪霊)は、ユシン・ヤシン(四隅・八方)から襲うとされるために、血の付いた小枝を家のユシン(四隅)に差すようになったんです♪

ウガンジュ(拝所)でのシマクサラシの拝み

集落行事では集落内の門中、ムートゥーヤー(宗家)の家長が集まって、その代表が拝みを捧げ、その後、一緒に肉をさばいて肉汁を作り振舞い、皆でいただくのが流れです。

ただ、近年では個人や一家庭でシマクサラシを行うこともあり、神人が個人的に拝む様子も見受けられます。

【 ウガンジュ(拝所)でのシマクサラシ 】

☆ …とは言っても「魔除け」の儀礼ですので、個人の拝みではヒラウコー(沖縄線香)のみを拝して手を合わせる程度です。

・ ヒラウコー(沖縄線香)はタヒラ半(二枚と半分=日本線香12本と3本)を拝してください。

もしもウサギムン(お供え物)を供えたい場合には、ビンシーに用意する基本のお供え物(花米・お酒・クバンチン三十円)で大丈夫です。

集落行事としては、前述したように生肉をジューバク(重箱)に詰めて拝む地域もありますが、この場合にも、始まる前に集落の男性が集まって、皆で肉を裁いて用意するケースを多く見受けます。

 

いかがでしたでしょうか、今日は沖縄では旧暦二月上旬に行われる悪疫祓い行事「シマクサラシ」をお伝えしました。今では見なくなりましたが、小枝に血を付けて悪疫を追い払うので、驚きの声も少なくありません。

また、実はシマクサラシには肉を振舞うことで悪疫祓いになった由来となる、昔話が各地にあります

多くは道端で出会った牛が青年を助けた後に、「自分を殺して肉汁にし、道端の人々に振舞うように…。」と、青年に伝えた昔ばなしが多いです。

これらの沖縄の昔話については、別記事「シマクサラシは血肉が悪疫祓い☆その由来となった昔話」でお伝えしていますので、コチラもぜひ、参考にしてください。

まとめ

沖縄の悪疫祓い「シマクサラシ」とは

・動物の血肉で悪疫を祓う行事
・ヒジャイナー(左縄)で結界を張る
・ヒジャイナーに骨付き肉を括り付ける
・集落では肉汁を作り振舞う
・家庭では血の付いた小枝を四隅に差す
・個人の拝みではヒラウコーを拝して拝むのみ