アブシバレーは虫祓いの儀礼☆家庭での供え方と拝み方

アブシバレーは虫祓いの儀礼☆家庭での供え方と拝み方

アブシバレーは沖縄の旧暦四月十四・十五日(新暦2019年5月18日、19日)に行う「虫祓い」の農耕儀礼です。けれども、今では沖縄の方でも普通に暮らしていると、滅多に見られなくなりましたよね。

それでも、アブシバレーで芭蕉やアダンの葉などで草舟を作り、そこに虫を入れて「ニライカナイ」へ送る儀礼が、離島や沖縄本島北部などで見受けられます。

今ではすっかり廃れてしまったアブシバレーですが、個人(家庭)単位でも拝み、後々まで繋げたいですよね。

そこで今日は、家庭で行うアブシバレーの拝み方、ウサギムン(お供え物)や、昔ながらの拝み方・儀礼をお伝えします。

アブシバレーは虫祓いの儀礼☆
家庭での供え方と拝み方

アブシバレーは害虫駆除の農耕儀礼

「アブシバレー」は「畦払い(アブシ=畦、バレー=払い)」と書き、畦(うね)とあるように農耕儀礼のひとつです。

沖縄本島ではすっかり見なくなったアブシバレーですが、伊計島などの離島地域では地域の御願行事としても残り、海岸から沖へ虫を入れた草舟を流す様子も見受けます。

そのためか、観光客の方々もしばしばアブシバレーの行事で見つけることもあるほどです。

【 昔ながらのアブシバレー(畦払い) 】

☆ 現実的に農作業での害虫駆除の日でもありますから、その昔にはこの日に茂った草木を刈って害虫駆除をし、(地域によっては)取った害虫を草舟に入れて、ニライカナイへ送りました。

・ アブシバレーには物忌み(禁忌)がある地域も多く、例えば、「田畑に肥料を肥やしてはならない」「針仕事はしない」などの物忌みがあります。

…一方で、草木を刈った害虫駆除の後、麦飯やはったい餅など、各々で家庭の御馳走を持ち寄り、宴を催した地域も多いです。

とある地域では「太鼓など、ハヤシの音は立てない」とする例もありましたが、一方で、宴の際に牛オーラセー(闘牛大会)や相撲など、民衆娯楽を楽しむ一例も見受けられます。

アブシバレーのお供え物は、ジューシー

定番の沖縄料理と言えば「沖縄そば」ですが、そんな沖縄そばのサイドメニューとして、よくセットで出される郷土料理が「ジューシー」ですよね。

沖縄のジューシーは、豚肉が入っているのが特徴的で、この豚肉を茹でた汁を出し汁として使います。そのため、肉の出汁が効いて深みや濃さが増すのが特徴的です。

アブシバレーではお仏壇へお供えをしますが、この時に出されるのが、このジューシーです。

ただ、もともと沖縄言葉で「ジューシー」とは「雑炊」の意味合いがあります。その昔は「固めの雑炊」として「クファジューシー」と言われ、実際に固めのジューシー雑炊を出す家も多くありました。

※ ちなみに「クファ」は「固い」の意味合いがあります。

話は少しそれましたが、アブシバレーの御願を家庭で行う時には、主にお仏壇へお供え物をして拝んでください。

【 アブシバレーのウサギムン(お供え物) 】

① クファジューシー

② ウサチ(酢の物や和え物などの副菜)

③ 基本のお供え物

・ ウチャトゥ(お茶) … 左右一対の二杯
・ 供え花 … 左右一対
・ ウサケ(お酒) … 中央に盃一杯

…以上です。クファジューシーとウサチは膳に配膳して、お仏壇へのウサギムン(お供え物)にはお箸を添えます。

多くの祖霊(御先祖様)がいらっしゃる場合には、二膳のセットを用意する家が多いです。お箸も多めに供えます。

★ アブシバレーに限らずお仏壇へ拝するヒラウコー(平線香=沖縄線香)の基本は、タヒラの二枚(日本線香であれば、6本・6本の合計12本)です。これを拝して手を合わせます。

※ ウサギムン(お供え物)の「クファジューシー」の作り方は、別記事「クファジューシーは豚出汁で☆簡単、炊飯器での作り方」でもお伝えしますので、こちらも参考にしてください。

ニライカナイへ送る、葉船の作り方

農家が少なくなった現代では、一連の農耕儀礼を仕事の発展に結びつけて御願を行う家が多くなりました。

そんななかでこのアブシバレーは、「害虫駆除」であるように、「問題」が流れる、解決する祈願として拝む方も増えています。

また、どうしても相まみえない、「目の上のたんこぶ」のような同僚が上司も、時にはいますよね。

あまり良くない事ではありますが…、アブシバレーを行って、他部署へ行くなど…、あまり関わらないで済むようにと、アブシバレーの儀礼を行った体験談もありました。

【 アブシバレーで害虫を乗せる、草舟の作り方 】

★ …と言っても、作り方はとても簡単です♪

① アダンや月桃、芭蕉などの大きめの葉を用意する。

② 左右の端を内側に折り曲げる。

③ 折り曲げたまま、葉茎の脇をめやすに…、左右合わせて四カ所に切れ目を入れる。

④ 切り目を入れることで、左右の端っこが三頭分されましたよね。その真ん中を残して左右を組みます。(片方の端っこを片方の輪の中に入れます。)

⑤ 左右を組んだら完成!害虫を入れて流してください。

※ 近くに絵をアップしますね(*^_^*)

…畦(うね)に茂った草木を刈り、出て来た害虫を入れるのが昔ながらの方法です。現代では虫型(虫の形に切った紙)や、(前述のように離れたい人がいるのなら)人型を流す体験談もありました♪

 
 

いかがでしたでしょうか♪今日は旧暦四月十四・十五日、新暦2019年では5月18日(土)19日(日)に行う、アブシバレー(畦払い)について、特に家庭での拝み方を中心にお伝えしました。

アブシバレーで害虫を草舟に乗せて、ニライカナイまで送るように、ニライカナイは本州の「極楽」とはまた少し違う感覚が、沖縄の人々にはあるのではないでしょうか。

死者の魂が七代後に祖霊となって戻るまで、「魂の戻る場所」であったり、そこには「極楽」ばかりではありません

また、アブシバレーの後からは山や海への立ち入りを禁ずる、物忌み行事が始まります。下記の記事も併せて参考にしてみてください♪

【 併せて読みたい、関連記事 】

① クファジューシーは豚出汁で☆簡単、炊飯器での作り方
…アブシバレーでお供えをするジューシーの簡単な作り方です。

② ヤマドゥミやウミドゥミとは☆沖縄の「物忌み」行事
…アブシバレー後から「ハーリーガ二」が鳴るまでの禁忌、「物忌み」についてお伝えします。

③ 牛オーラセーは沖縄の伝統娯楽☆昔を残す闘牛の醍醐味
…その昔には、このアブシバレーや農作業の慰労行事「クシユクイ」の宴でも、牛オーラセーが催されました。

まとめ

旧暦四月十四・十五日のアブシバレーとは

・害虫を払う「虫祓い」行事
・ジューシーをお仏壇に供える
・ウサチ(酢の物)を副菜に供える
・草舟に害虫を乗せて沖に流す
・草舟は「ニライカナイ」の方角へ流す
・紙で作った虫型や人型を使う人も増えた
・アブシバレー後から「物忌み」が始まる