沖縄の御願

【沖縄の御願道具】野外で使う「ビンシー」って何?

ビンシー2

沖縄の御願道具「ビンシー」は、沖縄に住む人々にとっては馴染みが深いものですよね。拝みの道具をひとつにまとめて携帯できる、便利な木箱です。

仏具店はもちろん、地方の大型スーパーなどでも食品ラップなんかと並んで販売されていますが、いざ自分が拝みで使おうと思うと、ちょっと使い方が心配ですよね。

しかも地域やによって供物が変わったりもします。そこで今日は、沖縄の野外の御願で利用される「ビンシー」についてお伝えします。

【沖縄の御願道具】
野外で使う「ビンシー」って何?

そもそも、ビンシーって何?

ビンシー説明

ビンシーの便利なポイントは、自宅でお供え物をセットして、そのままお供えできる点です。蓋を開けると、沖縄の御願で必要なお供え物が並ぶように仕切られています。

【 沖縄の御願でセットするもの 】

① お酒 … 向かって奥、左右の両脇にとっくりが入る造りです。その中央には盃を置くことができるように、木のお皿が乗っています。

② 花米 … 手前には三つの木枠スペースがあり、奥と同じく木のお皿が乗せてあります。その左右両脇に「花米」(地域によっては向かって左に「塩」)を置きます。

③ 洗い米や十円玉三つ … 中央の木のお皿に関しては、地域や家によって習わしが違う点は注意をしてください。洗い米を置く家もあれば、十円玉三つを置く家…、洗い米の上に小銭を乗せる家もあります。

ビンシーにセットするお供え物も、家や地域によって言い伝えはそれぞれです。例えば、手前のスペースに、花米・洗い米・塩と並べる家もあります。

花米と洗い米って何?

米

沖縄の御願に欠かせないお供え物が花米と洗い米です。神様への拝みではほとんどの沖縄の御願でお供えをしますが、地域によっては注意事項もあります。

【 沖縄の御願で供える、花米と洗い米 】

① 花米 … 炊く前の精米したお米、これが「花米」です。地域によって呼び名も違い「ミハナ」「カラミハナ」とも言われます。

② 洗い米 … 炊く前の花米を7回すすいだお米です。「アレーグミ」「アライミハナ」などと呼ばれます。

この花米と洗い米ですが、地域によって言い伝えが全く違うことがあるので注意してください。

洗い米は特別な日(人が亡くなった時など)に供える家もあり、洗い米の代わりに十円玉を三つ供えられることがあります。

ビンシーは「実印」ってホント?

家紋

現在沖縄の御願では「ビンシーは実印」と言われています。ただ、沖縄の御願文化を調べる研究家によっては、「最近出来た話じゃないか?」と言う人もいます。

【 「ビンシーは実印」は近代の話? 】

★ …と言うのも、ビンシー自体が比較的新しい沖縄の御願文化で、琉球王朝では膳にお供え物を配していたとか…。

・ さらに、「そもそも実印自体が近代のもの」と唱える方もいるからです。

…ここでちょっとおばぁの話を思い出しました。「沖縄の御願はユタさんに聞いたから、よく話す(伝える)ユタさんのやり方が広がるよねぇ~」

そもそもビンシーは「大衆文化」だそうで…、「ビンシーは実印」は、人から人へ伝えられるなかで広がった習わしなのかもしれません。

糸満に伝わる「認め印」ビンシーって?

糸満ビンシー

お供え物をそのまま拝することができる箱型ビンシーですが、もともとのお膳の盆に近い「膳型ビンシー」が、沖縄県南部の糸満の御願道具として残っています。

【 糸満に伝わる「認め印」ビンシー 】

★ 定番の箱型ビンシーが「実印」なら、この膳型ビンシーは「認め印」です。

・ 「実印」となるビンシーは神様への拝みで使い、「認め印」ビンシーは御先祖様(お墓)への拝みで使います。

膳型ビンシーには一段目に穴が二つ開いていて、その二つにお酒を入れたとっくりをセットします。お墓ではおちょこにお酒を注ぎ、膳の中央に配してお供えをしてください。

ビンシーを揃える

販売ビンシー

もともとは庶民の間でひろがった沖縄の御願道具、ビンシーですが、現代では盆に並べたお供え物を「仮ビンシー」と言うなど、ビンシーそのものが格式高いものになっています。

【 ビンシーを購入する 】

★ 南部など沖縄でも御願文化が今も残る地域では、スーパーに行けば普通に販売されていたりします。仏具店やホームセンターもおすすめです。

・ ネットで購入しようとすると、お仏壇づくりの「丸幸家具」がありますね。蒔絵タイプなど、おしゃれなものもあるので見てみてください。

スーパーやホームセンターで見ると、5000円前後が目安です。

前述した蒔絵や彫り柄など、凝っていれば5万円などするものもあり、家紋を入れてくれる仏具店もあるので、那覇市の仏壇通り(有名なお店は照屋仏具店)を訪ねてみるのも一案です。

ありがとう

いかがでしたか、今日は沖縄の野外の御願道具、ビンシーについてお伝えしました。ビンシーの両脇には穴が開いているので、持ち歩くために紐を通す家がほとんどですが、この紐にもさまざまあります。

地域の沖縄の御願行事では、それぞれの門中がビンシーを持ち寄り、公民館などで拝みを捧げますが、その時に並ばれたビンシーを見ると、それぞれの家の個性が分かります。

海外の方で一緒にビンシーを見て「化粧箱にしたい!」と買った方がいました…。

さまざまな説はありますが「ビンシーは実印」、むやみに貸し借りをせず大切に、拝みのパートナーとしてください。

まとめ

沖縄の御願道具、「ビンシー」とは
・拝み道具をまとめた携帯用の木箱
・屋外での拝みで便利
・むやみに貸し借りしない「実印」
・南部では「認め印」の膳型もある
・沖縄のスーパーなどでも販売している
・定番のビンシーは五千円が金額相場
・蒔絵や彫刻の高級なビンシーもある